東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物・環境工学専攻

生物環境工学研究室

Bioenvironmental Engineering Lab
The University of Tokyo

研究テーマ

CO2施用速度-温室内植物個体群純光合成速度応答曲線のリアルタイム
推定法―デジャブ・データ抽出による温室環境制御用コア情報の構築―

温室内の全植物体(以後、植物個体群)の純光合成速度を大きく高めることができる現実的でかつ十分な費用対効果が期待できる方法としては、CO2施用を挙げることができる。従来のCO2施用法には、天窓や側窓が閉まっている日の出前後から日中の時間帯に温室内のCO2濃度を温室外のCO2濃度の2倍程度以上に維持するものと、天窓や側窓が開いている時間帯に設定濃度を温室外のCO2濃度以下あるいはそれと同程度に維持するものがある。後者は、Partial enrichment (Hicklenton, 1988) あるいはゼロ濃度差CO2施用(古在・大山, 2008)と呼ばれている。前者の施用法では、一日のうちの施用可能な時間が換気を要しない温室内気温の低い時間に限られ、また後者の施用法では、純光合成速度の増加量が限定的である。また、これらの施用法では、温室管理者が費用対効果を把握・納得した上でCO2の施用速度を決定することはない。

そこで我々は、温室内に現時点でどれだけの速度でCO2を施用すれば、その温室内の植物個体群の純光合成速度がどれだけになるのか、すなわち費用対効果に関する「コア」情報であるCO2施用速度-温室内植物個体群純光合成速度応答曲線(CP曲線)をリアルタイムで時々刻々と推定する方法を開発し、このCP曲線に基づいてCO2施用速度を決定する手法の確立を目指すことにした。この手法が完成すれば、温室管理者は費用対効果を把握・納得した上で積極的なCO2施用を行うことができるようになる。ここでは、そのCP曲線のリアルタイム推定法について紹介する。

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